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医療関連トピックス

「食と健康」まちづくりセミナー要旨(下)パネル討論

  • 講演
「食と健康」まちづくりセミナー要旨(下)パネル討論

「医・食・農連携で健康なまちづくり」

パネリスト

島本和明氏 札幌医科大学学長

米沢則寿氏 帯広市長

長澤秀行氏 帯広畜産大学学長

コーディネーター

鎌田一氏 社会医療法人北斗理事長

鎌田 島本先生は基調講演の中で、フード特区の中での取り組みを紹介されたが、医農連携について事例があれば。

 島本 3年前から京都府立医科大の吉川敏一先生を中心に、医農連携で機能性食品の基礎を検討し、付加価値のある物を作ることで経済活性につなげようと取り組んでいる。ここに農林水産省がかなり研究費を出すようになってきた。これが産業になってくると、経済産業省も加わってくるという状況だと思う。

 鎌田 安倍政権の日本再興戦略の中で、裾野の広い医療関連産業をパッケージで再生していく施策が組まれている。市のフードバレー構想と医療、福祉との関係について市長の考えを。

 米沢 十勝の優位性がある食、農業を旗印にして、地域全体をデザインしていこうというのがフードバレーとかち。これからの超高齢社会を考えたときに、ますます大きくなるシルバー産業に、食と農という十勝の強みを重ねて考えることが基本だと思っている。

 鎌田 帯広畜産大学は食に関わる研究を幅広く行っている。

 長澤 食料はないといけないというのが第一で、その次に安全性、3番目に健康機能性がある物が望ましい、という流れ。その流れの全体を見ながら関われる、幅広い知識・技術を持った人材を送り出していくことが大学の使命。

 鎌田 団塊の世代が75歳を超えてくる2025年に向けて、医療介護供給体制を組み立て直そうと制度改革が行われているが、あと十数年で全て対応するのは難しい。箱物ではなく、地域包括ケアシステムを構築しなければならない。帯広市として、そのことを念頭に置いた取り組みは。

 米沢 地域包括ケアシステムを100万人都市で構築するのは大変だが、17万人の帯広、35万人の十勝ではそれができないといけないし、先鋭的なこと、十勝らしいことができると思っている。フードバレーを標榜(ひょうぼう)する十勝が不健康でいいのか。十勝こそかつての長野のように、健康寿命が一番にならないといけない。

 鎌田 地域包括ケアシステムの構築は、最終的には新しいコミュニティーをどのように作り上げていくかということで、そのときに市長の話にあったように、食をどう位置付けていくかは非常に大きなテーマになる。新たな医療・介護に介入してくる大学の取り組みがあれば。

 長澤 例えばアニマルセラピーは学術的には解明されていないが、動物には人の精神を豊かにする効果があることが分かっている。馬を使ったホースセラピーや、園芸セラピーというものもある。農業、動物にはいろいろな効果が期待される。そうした効果を通じて十勝の健康寿命が延び、それを学術的に解明できれば。時間がかかる構想だが、そういうところに視点を置いて進んでいきたい。

 鎌田 フードバレーとかちの取り組みに対して、島本先生からアドバイスを。

 島本 帯広・十勝は食に関しては日本のリーディングシティー。メディアを含めてもっと上手にアピールし、自信を持って進めることが重要かと思う。食と医は異質なものではなく、食に医学の入り口がある。我々ももっと食に入り込んでいきたい。

 鎌田 少子高齢化と人口オーナス(生産労働人口の減少)の時代に入り、右肩上がりの成長期に作られた仕組みにひずみが生まれている。世界に冠たる社会保障制度は守らなければならないが、仕組みは変えていかなければいけない。解決にはどの方向に向かえばいいのか、きょうの「食と健康」というテーマに大きなヒントがあるのではないかと思っている。