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熊本地震での避難が長期化、多くの被災者が車中泊を余儀なくされ、エコノミークラス症候群と見られる症状で救急搬送されるケースが相次ぎ死者も出ている。十勝でも人ごとではない。同症候群の患者を診察することがある帯広厚生病院の山本真副院長(呼吸器内科、医学博士)は「車中泊は想像以上に危険」と警鐘を鳴らしつつ、予防に関して「こまめに足など体を動かし、水分を取ること」と話している。
18日には熊本市内の自宅前で車中泊していた女性(51)が同症候群で死亡した。他にも重症の患者が出ている。
同症候群は、深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓塞栓症とも呼ばれる。同じ姿勢を取り続けることなどで発症することが多いという。「がん患者さんの合併症としてなるケースも少なくなく、血栓症自体は、それほど珍しい病気ではない。そうした場合は、病院で未然に防ぐための処置や早い段階で気づいて治療ができる」と山本副院長。
災害時で危険なのは、車中泊や狭い避難所生活などが続くことで健常な人が突発的に発症する場合だ。山本副院長も、「災害後は環境の悪化で下痢などを発症したり、トイレに行くのを回避しようと、水分を控えたりするなど脱水傾向になりがち。加えてマイカーの車内などで体を動かさない状況が重なることで、血栓ができるリスクが格段に高まる」と危ぐする。
災害による避難生活でDVTが多発することは、2004年の新潟県中越地震以降に広く知られるようになった。11年の東日本大震災では石巻赤十字病院(宮城県)などで構成するDVT検診チームが同年3月下旬から5月下旬、避難所22カ所の543人を対象に検診したところ、30・4%(165人)にDVT所見があり、特に震災直後の3月下旬は45・6%に上ったとの報告も出ている。
発症した場合の治療は、ヘパリンなどの血液が固まらないようにする薬(抗凝固薬)を点滴などで使用するほか、手術やカテーテルで血栓を取り除く方法もあるという。
予防策について、山本副院長は「体を定期的に動かすことと、血が固まらないよう、水分をこまめにしっかりと取ること。震災時に運動は難しくても、足首を定期的に動かすだけでも違う。地震などの災害では、けが人などが殺到し、医療機関の体制も十分ではない場合もあり、エコノミークラス症候群を意識して(自ら)予防してほしい」と呼び掛けていた。(