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医療関連トピックス

ルポとかち「感染症発生に危機感、帯広保健所で防護服着脱訓練」

ルポとかち「感染症発生に危機感、帯広保健所で防護服着脱訓練」

もしも十勝で恐ろしい感染症の患者が発生したら-。帯広保健所は十勝合同庁舎で、管内の医療機関と共に感染症に備えた防護服の着脱訓練を行った。韓国で中東呼吸器症候群(MERS)が流行しているさなかということもあり、参加者は危機感を持って訓練に臨んだが…。

近年、新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)や新型インフルエンザ、エボラ出血熱など、感染症の流行が世界的に拡大する例が後を絶たない。海外との人の往来が増えていることを考えれば、いつ日本国内や十勝で感染者が出ても不思議ではない状況だ。

 管内の患者搬送などに責任を持つ同保健所は、職員向けに毎年、防護服の着脱訓練を行っている。今年は24日に実施。初めて、MERSなど2類感染症の指定医療機関である帯広厚生病院など、管内4病院の感染管理認定看護師らも参加した。

 訓練では初めにアイソレーター(患者隔離装置)の使用方法を確認。アイソレーターは道内では渡島、千歳、名寄、釧路の4保健所にしか配備されておらず、十勝で患者が発生した場合は釧路から移送して使用することになる。この日は釧路保健所の職員が組み立て方などを説明。新型に更新されたばかりということもあり、機器の前後を間違えたり、内部を陰圧状態にするためのポンプがなかなか作動しなかったりという場面も。「これが訓練で良かった…」。一抹の不安が記者の頭をよぎった。

防護服の着脱訓練では、帯広厚生病院の感染管理認定看護師の青山由香さんが手本を示した。普段から病院職員の指導に当たっているだけあり、他の多くの参加者との技量の差は歴然。服や手袋、マスク、ゴーグルなどを無駄のない動きで着けてみせた。

 続いてアイソレーターに患者役を載せて移送する訓練に入った。当初は駐車場まで運ぶ予定だったが、ストレッチャーが庁舎のエレベーターの奥行きでは入りきらないため断念。こうした経験があれば、高層階で患者をアイソレーターに入れたはいいが、階下に下ろせないなどという凡ミスは防げるだろう。

 管内では過去に、エボラなどの1類感染症だけでなく、SARSやMERS、鳥インフルエンザなどの2類感染症も結核を除いて発生していない。そのためか、訓練では緊張感がありながらも、どこかに「十勝では発生しないだろう」との楽観ムードが流れている感も否めなかった。

韓国でのMERS流行を受け、厚労省は関係機関に国内での患者発生時の対応の再確認を指示。帯広厚生病院でも、24日までに患者受け入れの流れを院内に周知徹底したという。「国内でMERSが発生しても封じ込められるか」という記者の質問に、同病院の山本真副院長(感染対策室長)は「厚労省の動きも早く、封じ込められるだろう」と力強く答えた上で、「また、そうしなければならない」と付け加えた。

 危機管理の鉄則は「悲観的に準備し、楽観的に行動する」こと。同保健所の山本長史所長は「保健所や病院だけでなく、地域が危機感を共有することが必要」と強調する。住民が世界で起きていることに無関心で、「十勝は大丈夫」と楽観視することこそが、感染症に対し最大の隙になるのだと感じた。